Topic 94. 「加齢黄斑変性」治療で9割効果も放置は危険 定年世代の眼病対策
「加齢黄斑変性」治療で9割効果も放置は危険 定年世代の眼病対策
★【老眼、白内障、緑内障…定年世代の眼病対策】(4)
前回の小欄で、日本人の中途失明原因の第1位が緑内障であると書いた。しかし、将来その座を奪いかねない存在の眼病がある。「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」だ。
世界初のiPS細胞を用いた再生医療の対象となったことで知名度を高めた病気だが、その実態を知る人は多くない。リスクの高まる定年世代は、特に知識を深めておきたい。
加齢黄斑変性とは、年齢を重ねることで「黄斑」に変性が生じて視力が低下する病気。50歳を過ぎると「加齢」が付くが、それより若い人の場合は単に「黄斑変性」と呼ぶ。ただ、年齢に関係なく黄斑のことを詳しく知っている人は少ない。
「目をカメラに例えたとき、レンズのさらに奥にあるフィルムに該当するのが網膜。そして、その網膜の中心にあるのが黄斑です。年齢的な要因もさることながら、日々浴びている紫外線やブルーライトなど光の刺激で黄斑がダメージを受けると、それを補うために新しい血管ができるのですが、その血管は脆弱なため、簡単に破れて出血したり浮腫(むく)んだりする。これにより二次的な被害が生じるのが加齢黄斑変性です」と語るのは眼科専門医の平松類医師。
黄斑が変性すると、モノがゆがんで見えたり、視力が低下するなどの症状が出る。しかし、片目だけに症状が出ても、もう片方の目や脳がそれを補正するので、当人は気付きにくい。片方の目を交互に閉じてモノを見ると、その変化に気付くことがあるが、診断には眼底カメラでの撮影が不可欠だ。
前回の小欄で、日本人の中途失明原因の第1位が緑内障であると書いた。しかし、将来その座を奪いかねない存在の眼病がある。「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」だ。
世界初のiPS細胞を用いた再生医療の対象となったことで知名度を高めた病気だが、その実態を知る人は多くない。リスクの高まる定年世代は、特に知識を深めておきたい。
加齢黄斑変性とは、年齢を重ねることで「黄斑」に変性が生じて視力が低下する病気。50歳を過ぎると「加齢」が付くが、それより若い人の場合は単に「黄斑変性」と呼ぶ。ただ、年齢に関係なく黄斑のことを詳しく知っている人は少ない。
「目をカメラに例えたとき、レンズのさらに奥にあるフィルムに該当するのが網膜。そして、その網膜の中心にあるのが黄斑です。年齢的な要因もさることながら、日々浴びている紫外線やブルーライトなど光の刺激で黄斑がダメージを受けると、それを補うために新しい血管ができるのですが、その血管は脆弱なため、簡単に破れて出血したり浮腫(むく)んだりする。これにより二次的な被害が生じるのが加齢黄斑変性です」と語るのは眼科専門医の平松類医師。
黄斑が変性すると、モノがゆがんで見えたり、視力が低下するなどの症状が出る。しかし、片目だけに症状が出ても、もう片方の目や脳がそれを補正するので、当人は気付きにくい。片方の目を交互に閉じてモノを見ると、その変化に気付くことがあるが、診断には眼底カメラでの撮影が不可欠だ。
加齢黄斑変性と診断されたら、治療法はほぼ決まっている。抗VEGF抗体という薬を、複数回にわたって目の硝子体(しょうしたい)という部分に注射をすることで、新しい血管が生まれないようにするのだ。
「この治療によって全体の9割方の症例は現状維持以上の治療効果が得られます。これとは別に、特殊なレーザーを使って新生血管を焼灼する方法もありますが、特殊な治療なので、医療機関は限定されます」
そう語る平松医師は、加齢黄斑変性に限らず、眼病治療の成果の捉え方には、患者と医師の間で温度差が大きい-と指摘する。
「治療をすることで、医師は『よくなる』、患者は『治る』と考える。この二つの言葉は、似てはいるけれど同じではない。結果として、治療前よりよくはなっているのに、期待していたほどではない成果に対してがっかりしてしまう患者は少なくない」
事実、加齢黄斑変性を放置していれば、いずれ視力が低下して失明に至る危険性がある。それを治療によって食い止めることができれば、その治療は「成功」だ。
だが、患者は「若い頃の健康な目」を想像してしまうため、その結果に満足できない。
もちろん、治療は早期に始めるほど効果も大きいが、目の病気は総じて早期では見つけにくい。ここに眼病治療の難しさがある。少なくとも、60歳を過ぎたら積極的に「目の異常」に目を向ける必要があるのだが…。(中井広二)
■医療監修/平松類(ひらまつ・るい) 医師。昭和大学医学部卒業。二本松眼科病院勤務。昭和大学非常勤講師。医学博士。最新刊に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)
「この治療によって全体の9割方の症例は現状維持以上の治療効果が得られます。これとは別に、特殊なレーザーを使って新生血管を焼灼する方法もありますが、特殊な治療なので、医療機関は限定されます」
そう語る平松医師は、加齢黄斑変性に限らず、眼病治療の成果の捉え方には、患者と医師の間で温度差が大きい-と指摘する。
「治療をすることで、医師は『よくなる』、患者は『治る』と考える。この二つの言葉は、似てはいるけれど同じではない。結果として、治療前よりよくはなっているのに、期待していたほどではない成果に対してがっかりしてしまう患者は少なくない」
事実、加齢黄斑変性を放置していれば、いずれ視力が低下して失明に至る危険性がある。それを治療によって食い止めることができれば、その治療は「成功」だ。
だが、患者は「若い頃の健康な目」を想像してしまうため、その結果に満足できない。
もちろん、治療は早期に始めるほど効果も大きいが、目の病気は総じて早期では見つけにくい。ここに眼病治療の難しさがある。少なくとも、60歳を過ぎたら積極的に「目の異常」に目を向ける必要があるのだが…。(中井広二)
■医療監修/平松類(ひらまつ・るい) 医師。昭和大学医学部卒業。二本松眼科病院勤務。昭和大学非常勤講師。医学博士。最新刊に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)