グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



HOME >  各商品のご紹介 >  Topics >  Topic 61. まるでSF?進化するコンタクトレンズ

Topic 61. まるでSF?進化するコンタクトレンズ


スマートフォンなどを持たなくても、目の前の風景の上に、行きたい場所への道順や欲しい情報が映し出されるー。SF映画のワンシーンのようですが、最新型のコンタクトレンズ「スマートコンタクトレンズ」の誕生によって、近い将来、現実のものとなるかも知れません。スマートコンタクトレンズとはいったいどんな製品なのでしょうか?(経済部記者 寺田麻美)

目の前の景色に…
こちらが、アメリカのスタートアップ企業「Mojo Vision」が開発を進めている「スマートコンタクトレンズ」です。

ことし7月、試作品が日本で披露されました。

大きさは、ソフトコンタクトレンズよりも大きい、直径17ミリメートル。白目の部分まで目を覆うタイプのレンズで、中には、緑色の電子基板が埋め込まれています。

このレンズをとおして、いったい何が見えるのか。百聞は一見にしかず。私は、ドキドキしながら、レンズをのぞき込みました。

画像をクリックすると動画が見られます(14秒)

「見える!!!」

私が見ていてた部屋の壁の上に、飛行機の搭乗案内の情報の画像が現れたのです。
スマートコンタクト仕組みは?
いったいどのような仕組みになっているのでしょうか。

レンズの中央にある六角形の部分には、わずか0.48ミリメートルのディスプレーが配置されています。

そこで表示された画像が、網膜に直接映し出されることで、情報を見ることができるのです。小さいので、視界の邪魔にはなりません。

レンズには、センサーやバッテリーも内蔵されています。

このうちセンサーは、常に目の動きを追っていて、頭を動かすと、その視線に合わせて情報の表示範囲が変わります。

また、視線は“ポインター”の役割も担っているため、メニュー画面をじっと見つめることで、表示内容の変更といった操作をすることもできます。

開発した会社では、こうした機能によって、将来的には「移動中」や「運動中」、人との「会話中」でも、動作を中断させることなく、欲しい情報にアクセスできるようになると考えています。

マイク・ウィーマーCTO(最高技術責任者)

ウィーマーCTO
「まず始めに、視覚に障害がある方々が、私たちの技術によって、少しでもよく見えて、動きやすいように補助することを想定しています。このほか、自転車やジョギング、ウォーキングなど、活動中に電話や時計に視線を落とさず、前をしっかり向いておく必要があるアクティビティをする人たちへの利用も想定しています」
開発のきっかけは?
SF映画の世界の話のようなこのコンタクトレンズ。
開発のきっかけは、創業者のひとり、ドリュー・パーキンスCEOが白内障を患ったことでした。

ドリュー・パーキンスCEO

白内障は手術で改善したものの、パソコンの画面や人が付けている名札など、対象物との距離によってはピントが合わず、ぼやけて見えることに不便を感じたパーキンスCEO。

「SFドラマの主人公のような超強力な視力を持つことができないのか?」

そう考えたことが、開発をはじめるきっかけとなりました。

2015年にカリフォルニアに会社を設立。シリコンバレーの最前線で経験を積んできた技術者らによって研究開発を進め、創業から7年たったことし、試作品を完成させました。

最新の実験では、パーキンスCEOが、試作品のスマートコンタクトレンズを実際に眼に装着し、画像を確認することができたということです。

シンクレア 上席副社長
「ディスプレーや電力システム、無線通信など私たちが独自に開発しなければならなかった部品が非常にたくさんありました。いちばん大変だったのは、これら全てを1つのシステムにまとめ、安全に装着できるものにすることでした」
日本の大手メーカーも共同開発
実はこのスマートコンタクトレンズの開発には、今後、日本のメーカーが加わることが決まっています。国内最大手のコンタクトレンズメーカー「メニコン」です。

日本で初めてハードコンタクトレンズを売り出し、およそ70年間に渡って、コンタクトレンズに関わる幅広い研究開発を手がけてきました。

そうした実績を高く評価され、2年前にアメリカの企業とスマートコンタクトレンズの共同開発契約を結んだのです。

会社は、製品の安全性に関わる重要な役割を期待されています。

そのうちの1つが、電子デバイスを正確な位置に埋め込む技術の開発です。

型に材料を流し込んでハードコンタクトレンズを作るという、これまで培ってきた技術によって、電子デバイスを狙った位置に挟み込むとともに、デバイスがレンズの外に飛び出すのを防ぐことができると考えています。

また、新しいレンズの素材の開発も進めています。

目の上に直接のせるコンタクトレンズは、レンズを通して、いかに多くの酸素を目に届けることができるのかが、品質を大きく左右します。

スマートコンタクトレンズは、通常のコンタクトレンズよりサイズが大きく、電子デバイスが埋め込まれているため、酸素の透過性を従来より高める必要があります。

会社では、こうした課題に対応できる材料の開発などを目指しています。

メニコン 鈴木弘昭開発リーダー

鈴木 開発リーダー
「これからコンタクトレンズは、新たに付加価値をつけていかないといけない。今後、この分野は伸びていくのを期待している。開発にあたっては、わくわくしているのと同時に、安全性を担保することへの責任を感じている」
世界の企業が注目
一方、スマートコンタクトレンズの将来性に、早くも世界の多くの企業が注目しています。

「Mojo Vision」は、アディダスなどスポーツブランドと提携しているほか、アメリカのディズニーが主催するスタートアップ支援プログラムにも採択されています。

また、日本からは、携帯大手のKDDIが出資しています。

会社ではまず、視覚に障害がある人への支援機器として、見えているモノの輪郭を強調させる機能をつけ、10年以内の製品の実用化を目指しています。
ウィーマーCTO
「コンタクトレンズは世界で最もポピュラーなウェアラブルです。数千万人、数億人の人々が毎朝着用しています。それでも、未だスマート機能が搭載されたものはありません。スマートコンタクトレンズが普及して、健康でより良い生活ができる未来を思い描いています」
私たちが情報を得る手段は、パソコンからスマートフォンへと、だんだん人に近づいてきているのが現状です。

その究極系とも言える、今回のスマートコンタクトレンズ。
実用化に向けては、安全性の確保や使いやすさといった面で、さまざまなハードルがあるのは確かですが、テクノロジーの進化がここまで来たのかと、驚きに満ちた取材でした。

まさに、「これからの開発に目が離せない!」と感じました。